バスの話




あなたは大きなバスに乗っています。そのバスにはとんでもなくおおぜいの人が乗っていて、開いた窓からは今にも人が落ちそうなありさまです。

そのバスの運転手はというと、あなたとは全く関係のない他人なのですが、何度か顔を見た覚えがあります。でもどんな人だったかははっきり思い出すことはできません。


今までは舗装されたきれいな道を走ってきていたのですが、しばらく先を見ると土煙が立っているようです。バスがゆっくり近づくと、そこから先は舗装もしていないでこぼこの道が続いているのが見えます。しかもとても急な上り坂になっているようです。




こんな道をこのバスが走ることができるのかと思っていたあなたに、バスの運転手が話しかけてきます。

「悪いんだが、ここで降りてもらえないか?この先の道を見たまえ。今までは良かったが、こんな道を通るには少しでもバスを軽くしなきゃならん。君はこのバスにもう20年も乗ってきたんだ。そろそろ降りてもいいころだろう。そもそも、君と私とは赤の他人同士なんだからな・・・いや、私に従ってもらわないと困るよ。このバスで一番偉いのは私なもんでね。」

何を言われているのかさっぱりとわからないまま、あなたはバスを降ろされ、気がついたときにはバスは走り去ろうとしているところでした。



あなたは頭の中が真っ白になりながらも、ある一つのことに気がつきます。20年ぶりに見たバスの外観は、以前見たとき、そう、30年前のものとはひどく違ったものになっていることです。


車体の塗装は剥げ、錆びつき、いたるところ泥まみれでした。屋根にいたっては半分崩れかけているようにも見えます。

そうしているうちに、あなたが20年間慣れ親しんだバスは土煙を残しながら遠くに去ってしましました。



あなたはぼんやり考えます。いったい、ここはどこなんだ?20年もあの運転手、いや、あいつが言うところの赤の他人に進むべき道をまかせてしまっていたから、どこに行き着いてしまったのかさっぱり見当がつかない・・・


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